公開日:2026年2月25日

歴史空間にひらかれる現代アートの体験 ──作家と出会う、アーティスト主導のアートフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2026」をレポート

京都の歴史的建造物のなかで、現代アートが交わる。作家と来場者が言葉を交わしながら作品と向き合う、アーティスト主導のアートフェアが今年も開催

左からYotta《花子》とヤノベケンジ《宇宙猫涅槃像》

アーティスト主導という仕組みが示す新しいフェアのかたち、第9回「ARTISTS' FAIR KYOTO 2026」

京都の歴史的空間を舞台に開催される「ARTISTS' FAIR KYOTO 2026」は、「アーティスト主導のアートフェア」として誕生し、今年で第9回を迎える。京都国立博物館 明治古都館や東福寺といった歴史のある建造物のなかで現代アートが展示される。来場者は作品を鑑賞するだけでなく、作家本人と言葉を交わしながら作品の理解を深め、その場で購入することもできる。

出品作家の推薦や選出にアーティスト自身が関わり、作家同士の信頼関係や視点によって構成されている点も、このフェアの大きな魅力のひとつだ。さらに、アドバイザリーボードを務める著名アーティストの作品も展示され、若手から第一線で活躍する作家までの表現が一堂に会する場となっている。

会場風景

京都国立博物館 明治古都館には、約40組のアーティストが集結。1895年竣工の重要文化財建築の装飾性や構造を活かしながら、館内を巡って鑑賞できる構成となっている。会場には足場材で制作された椅子が設置され、来場者は腰掛けて作品を鑑賞し、作家との対話やポートフォリオの閲覧を通して作品世界に触れていく。

また、ストックヤードを展示空間として公開する試みや、映像作品のための暗がりの空間、中央ホールでの展示など、この場の特性を活かした展示方法が取り入れられている。

京都国立博物館 明治古都館

なかでも注目したいのが、「ARTISTS' FAIR KYOTO 2026 マイナビ ART AWARD」で最優秀賞を受賞した中西凛の作品だ。可食素材による彫刻シリーズ「eat sculpture」は、羊や鳩の姿をした造形が崩れることで内部のチョコレートが現れ、その変化の様子が映像とともに展示される。

中西凛 eat sculpture

「主にチョコレートとホワイトチョコレート、少し水あめを使い、食用色素を混ぜて質感を調整しています。見るという鑑賞の先に、香りや味わい、触感へと感覚が広がっていくイメージでこのシリーズを制作しました」

作品は、視覚だけにとどまらない鑑賞のあり方を想起させる。可食素材を用いる背景には、作家自身の生活環境があるという。

「実家が洋菓子屋で、子供の頃から菓子の材料が身近にありました。彫刻素材よりも自然に感じられる素材なんです」

崩れていく造形は、消費や循環、生命のつながりを思わせる。作品の変化を見つめるなかで、鑑賞者は身体と食、時間との関係について思いを巡らせることになるだろう。

中西凛 eat sculpture