公開日:2026年2月25日

東京国立博物館「あそびば☺とーはく!」に見た、未来への意志と「子連れ鑑賞」の現在地。海外ミュージアムとの比較から考える

世界のミュージアムが「遊び」を本気で進化させるなか、東博が目指している先は? 子供目線で文化遺産を巡るライター・minaが読み解く(構成:灰咲光那)

「あそびば☺とーはく」会場風景 撮影:佐藤基

上野・東京国立博物館で3月1日まで開催中のプレイエリア「あそびば☺とーはく!」は、小学生以下を対象にした体験型企画だ。初回開催(2024年11月8日〜12月8日)に続く第2弾となる今回のテーマは、「日本のおめでたい模様」。「とーはくふじ」、ぬり絵やボールプールなど、子連れ鑑賞者のための多彩なアクティビティが多数用意されている。本稿では、子供向けプログラムが充実する海外のミュージアムの事例と比較しながら、日本最大の博物館が「遊び」に込めた意図と課題を考える。

「とーはくふじ」が示す東博の本気

重要文化財である東京国立博物館の本館の壮麗な大階段。奥の特別5室に設けられた「あそびば☺とーはく!」の中央にそびえる「とーはくふじ」(標高1.7m)は、初開催だった前回にはなかった「すべり台系」遊具だ。

日本の感覚からすると、目を剥くほど「遊び」が豊富な北欧のミュージアムですら、スライダー系は屋内ではほぼ見かけなかった。安全管理が厳しい日本の、それも国立の博物館としては「攻めている」と言える。ケガやトラブルへの免責事項が設けられているとはいえ、乳幼児と小学生が次々とヘッドスライディングする光景は、「本気で楽しませる」ことへの、東博の「覚悟」を感じさせる。

「あそびば☺とーはく」会場風景 撮影:佐藤基

今回のテーマは「日本のおめでたい模様」。華やかなモチーフがあふれ、英語併記(一部に中国語・韓国語)が徹底した会場は、インバウンド受けもよさそうだ。重要文化財《色絵月梅図茶壺》のぬり絵に外国人らしい赤ちゃんがクレヨンで色付けし、「Beautiful!」とママに褒められる様子がほほえましい。

「あそびば☺とーはく」会場風景 撮影:佐藤基

ぬり絵は海外でも定番中の定番。たとえば、台湾・台北の国立故宮博物院のプレイエリア(子供学芸センター)では、国宝《清 翠玉白菜》などのぬり絵をスキャナーにかけると、自分の絵が陳列棚に映し出されるという秀逸なアクティビティがある。

ぬり絵が展示品のように映し出される故宮博物院の子供向けアクティビティ 2025年12月 撮影:筆者

ここまでハイテクでなくても、展示室の片隅や、出入口の脇にぬり絵が常備されているだけで、子連れ鑑賞者としてはどれだけ救われるか。東博の本館1階にもぬり絵コーナーはあるが、安全のためかシートやペンが常備されていないのを残念に思う。

いっぽう、ボールプールから縁起物の鷹と茄子のぬいぐるみを探し出す「宝探し」の趣向は、スウェーデン・ストックホルムの国立歴史博物館の砂場で体験した、ビーズ探しのアクティビティと似ている。砂場だけに、ボールプールより難易度は高かった。当時3歳の次女はバケツとスコップで遊び始めてしまったが、6歳の長女は発掘現場さながらに砂をふるいにかけ、バイキング時代のアクセサリーを彷彿とさせる小さなビーズを「発掘」。

宝探しができるスウェーデン国立歴史博物館の砂場の解説は、展示への関心を促す内容 2025年8月 撮影:筆者

その達成感に比べると、大量のぬいぐるみが露わになったままのボールプールは、小学生には少し物足りないかもしれない。せっかくなら展示品とリンクしていたほうが、ミュージアムの「本丸」である展示への関心につながりやすい。その点では、特別展と連動して「埴輪探し」ができた前回のボールプールは、展示との接続性がより強かったと言えよう。