ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス 祭壇 1909 テンペラ、厚紙 国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.
リトアニアを代表する芸術家、ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス(1875〜1911)の大回顧展「チュルリョーニス展 内なる星図」が、2026年3月28日~6月14日に東京・上野の国立西洋美術館で開催される。
1875年にリトアニア南部の町に生まれたチュルリョーニスは、幼少期から音楽の才能を示し、1894年、18歳で作曲を学び始めたのち、1902年頃に長年の夢であった絵画の道を志す。絵画と音楽というふたつの領域で類い稀なる才能を発揮し、35歳の若さで亡くなるまでのわずか6年ほどの画業で、300点を超える作品を手がけた。
世紀末のアール・ヌーヴォーや象徴主義、ジャポニスムといった国際的な芸術動向に呼応しながら、作曲家ならではの感性や、ロシア帝国支配下で民族運動のただなかにあったリトアニア固有のアイデンティティに根差した作品群は、唯一無二の個性を放っており、近年、オルセー美術館をはじめヨーロッパ各地で展覧会が開催されるなど、国際的に再評価の機運が高まっている。
2025年はチュルリョーニスの生誕150周年にあたる年。その記念イベントの一環で行われる本展は、日本では34年ぶりとなる回顧展。現存するチュルリョーニス作品の大部分を所蔵する、リトアニア・カウナスの国立M.K.チュルリョーニス美術館による全面協力のもと、主要な絵画やグラフィック作品など約80点が紹介される。人間の精神世界や宇宙の神秘を描いた幻想的な作品の数々を堪能できる貴重な機会となる。
展示はプロローグとエピローグを含む全5章構成。チュルリョーニスはリトアニアの民話などの民俗文化を着蔵源とするいっぽう、神智学や天文学など、当時の国際的な思想潮流にも関心を寄せており、本展では、独創的な象徴に満ちた《祭壇》や謎に包まれた最大の代表作《レックス(王)》が日本で初めて公開される。なかでも《レックス(王)》は、作家の作品のなかで唯一1mを超える大作で、本展の見どころのひとつだ。
また、今日チュルリョーニスの評価を確固たるものにしている音楽様式の導入にも光を当て、ソナタ形式の絵画連作をはじめ、自身の手による楽譜なども展示。会場では、作家が手がけた音楽も流れる。
国際的に評価の高まるリトアニアの国民的芸術家、ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス。その作品世界を存分に堪能できる展覧会になりそうだ。