公開日:2025年6月19日

「六本木クロッシング2025」が森美術館で12月開催へ。“時間”をテーマに21組のアーティストが集結

「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」が12月3日から2026年3月29日まで開催

A.A.Murakami ニュー・スプリング 2017 展示風景:「Studio Swine x COS, NewSpring」 ミラノサローネ 2017

現代アートの祭典「六本木クロッシング」が帰ってくる

3年にいちど、日本の現代アートシーンを定点観測的に概観する展覧会として森美術館で開催されてきた「六本木クロッシング」。これまで若手からベテランまで多様なアーティストを、ユニークなテーマのもとに紹介してきた同展が、今回はサブタイトルを「時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」とし、"時間"という抽象的でありながら普遍的なテーマに挑む。出展作家は、国籍を問わず日本で活動する、あるいは日本にルーツを持ち海外で活躍する全21組。会期は12月3日から2026年3月29日まで

桑田卓郎 無題 2016

8回目となる本展では、德山拓一(森美術館キュレーター)、矢作学(森美術館アソシエイト・キュレーター)に加えて、レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)、キム・ヘジュ(シンガポール美術館シニア・キュレーター)という国際的に活動するアジアのゲストキュレーター2名を迎えた共同キュレーション形式を採用。

参加作家にはA.A.Murakami、ケリー・アカシ、アメフラシ、荒木悠、ガーダー・アイダ・アイナーソン、ひがれお、廣直高、細井美裕、木原共、金仁淑、北澤潤、桑田卓郎、宮田明日鹿、Multiple Spirits、沖潤子、庄司朝美、シュシ・スライマン、和田礼治郎、マヤ・ワタナベ、キャリー・ヤマオカ、ズガ・コーサクとクリ・エイトが名を重ねる。

廣直高 無題(解剖学) 2024 Courtesy:Misako & Rosen, Tokyo 撮影:岡野慶

作品で感じる「時間」という体験

注目は、感覚に訴える体験型作品だ。建築・デザインの領域を越えて活躍するA.A.Murakamiによる大型インスタレーションは、霧や光といった流動的な要素を用い、観客を物理的にも心理的にも包み込む体験を創出する。

いっぽう、和田礼治郎のブランデーを複層ガラスに封入した立体作品では、果実の発酵と蒸留のプロセスを経た液体を作品に取り込むことで「生と死」や「時間」などの形而上学的なテーマと向き合う。

和田礼治郎 スカーレット・ポータル 2020 展示風景:「EmbracedVoid」 ダニエル・マルツォーナ(ベルリン) 2020 撮影:NickAsh

ペルー人でアムステルダムを拠点に活動するマヤ・ワタナベは、考古学的なアプローチから人類史を超える時間の概念を示唆する映像インスタレーションを制作。そして、特定の場所に集う人々の声や環境音を用いた細井美裕のサウンド・ピースでは、個人や社会、自然や記憶といった様々なスケールの時間が交差する。

記憶と歴史を紡ぐアート

沖潤子による繊細な刺繍作品は、手仕事や布に宿る家族の記憶をたどりながら、個人と社会、過去と現在を結び直す。また、桑田卓郎、日本の陶芸の技術と歴史を大胆に引用しつつ、鮮やかな色彩や奇抜なフォルムで時代を超越する造形美を実現し、「日本的なもの」への認識を更新する。

日本軍のジャワ侵攻で使用され、その後インドネシア軍が独立戦争のために再利用した戦闘機をインドネシアの職人たちと蘇らせる北澤潤のプロジェクトは、歴史の痕跡をダイナミックに描き出しながら、両国をつなぐことの葛藤と可能性を投げかける。

北澤潤 フラジャイル・ギフト:隼の凧 2024 展示風景:ARTJOG 2024 ジョグジャ国立美術館(インドネシア、ジョグジャカルタ) 撮影:Aditya Putra Nurfaizi

境界を越える「日本のアート」

本展はさらに「日本のアート」がいまや国籍や地理的な境界に限定されないことを明示する。ケリー・アカシは、ブロンズやガラスを用いた彫刻で身体や記憶、身体や記憶、刹那と永遠性といったテーマを詩的に表現し、キャリー・ヤマオカはアナログ写真の技法を通して、記憶の曖昧さや風景のうつろいを探る。両者ともアメリカを拠点にしながら、ルーツや素材を起点に「日本性」を再考する。

ケリー・アカシ モニュメント(再生)2024-25 Courtesy:Lisson Gallery 撮影:Dawn Blackman

シュシ・スライマンはマレーシア人アーティストでありながら、長年にわたり広島県尾道市で土地の歴史やコミュニティに根差した活動を続けている。多様な視点による記憶、移動、越境といったテーマが見て取れるこれらの作品は、日本の社会と文化を様々なかたちで物語る。

国境やジャンルを越えて展開されるアートの現在地を、多層的に体感できる貴重な機会となりそうだ。

沖潤子 甘い生活 2022 Courtesy:KOSAKU KANECHIKA, Tokyo 撮影:木奥惠三

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