左:クロード・モネ 戸外の人物習作―日傘を持つ右向きの女 1886 オルセー美術館蔵 Photo © GrandPalaisRmn(musée d’Orsay)/Stéphane Maréchalle/distributed by AMF 右:クロード・モネ トルーヴィル、ロシュ・ノワールのホテル 1870 オルセー美術館 Photo © GrandPalaisRmn(musée d’Orsay)/Gabriel de Carvalho /distributed by AMF
東京・京橋に位置するアーティゾン美術館の2026年展覧会スケジュールが発表された。同館は1952年に開館したブリヂストン美術館が前身。創始者である石橋正二郎が所有していた作品を基盤に、いまなおコレクションを拡大し続けている。近年は、従来から評価の高い印象派の絵画や日本近代美術に加えて、戦後の抽象画や日本の近世美術、アボリジナルアートなどの収集も強化。古代から現代まで、幅広い時代の作品を扱う展覧会を開催し続けている。
印象派の巨匠、クロード・モネ(1840〜1926)の没後100年を記念した大規模回顧展。モネは、自然光の移ろいに魅せられ、その美しさをキャンヴァスにとどめようと生涯をかけて探求した。展覧会にはオルセー美術館の全面協力のもと、同館が収蔵するモネコレクション41点を含む、オルセー美術館所蔵の約90点に、国内の美術館や個人コレクションからの作品を加えた約140点が並ぶ。日本初公開となる作品や、貴重な写真資料のほか、キャリア初期の作品《かささぎ》(1868〜69)や、「睡蓮」をはじめとするモネの重要作が来日することは、本展の大きな見どころのひとつだ。詳細はニュースをチェック。
同時開催される展覧会は、「語り」と「空間(リウム -arium)」をテーマにした「カタリウム」。作品を発案した人がその思いを告げるところや、絵かきのアトリエでの独り言。あるいは、作品の仕上がり具合を目にした人々の感想など、作品を前に展開する語りに耳を傾け、その場をイメージするような展覧会となる。
エットレ・ソットサス(1917〜2007)は、20世紀イタリアデザインにおける世界的な巨匠。1950年代からオリヴェッティ社やポルトロノーヴァ社のデザイナーとして数々の名作を生み出し、1981年には国際的なデザイナー集団「メンフィス」を結成して、ポストモダニズムの革新的なデザインで一世を風靡した。本展は作家にとって日本初となる大規模個展。石橋財団が所蔵する初期から晩年におよぶ112点が一堂に会し、創意あふれるデザインの数々が紹介される。
昭和期を代表する詩人にして美術批評家の瀧口修造(1903〜79)。今回テーマとなるのは、溝口が1960年代に入ってから取り組んでいた造形作品だ。それらは、20年代よりシュルレアリスムの影響を強く受けて行われた詩作や、フランスや日本の同時代の美術を対象とする批評の実践の後に位置づけられる。本展では、このような背景を踏まえ、美術批評や詩作、展覧会監修をはじめとする、瀧口の活動全体を視野に収め、制作の意図や性格をとらえなおすような機会となる。また、海外ではパウル・クレーやジョアン・ミロ、ジョセフ・コーネルら、日本では福島秀子や山口勝弘、草間彌生らといった、関連する作家の作品もあわせて見ることができる。
開館から毎年開催している、石橋財団コレクションと現代アーティストとの共演「ジャム・セッション」。第7回となる今回は、芸術と社会・歴史との密接な関係性を、綿密なリサーチとフィールドワークを通じて探究してきた藤井光を迎える。本展において藤井が注目するのは、プラトン『国家』第7巻に登場する「洞窟の比喩」の中心的なテーマ「光=真理」。その光が何を照らしているのかではなく、「その光を誰が照らしているのか」という視点へと問いを反転させ、真理の構造そのものを批評的に問い直す。
同時開催される展覧会は、明治期に西洋文化を学ぶため異邦人(エトランゼ)として海外を渡った画家に焦点を当てる「エトランゼたち」。石橋財団コレクションから黒田清輝、藤島武二、安井曾太郎、藤田嗣治らによる滞欧作が紹介される。