公開日:2026年2月25日

「ジャッド | マーファ展」(ワタリウム美術館)レポート。20世紀を代表するアーティストの実践を、空間への関心からとらえ直す

展覧会の見どころを、息子であるフレイヴィン・ジャッドのコメントとともに紹介。会期は6月7日まで。

会場風景より、《無題》(1990)、静岡県立美術館蔵

晩年の拠点マーファでの実践に注目した回顧展

東京・外苑前に位置するワタリウム美術館では、20世紀を代表する現代アーティスト、ドナルド・ジャッドの回顧展「ジャッド | マーファ展」が開催中だ。会期は2月15日〜6月7日。

ジャッドは、アメリカ・ミズーリ州の生まれ。1946年から約1年間陸軍の兵士として韓国に駐留したのち、コロンビア大学で哲学と美術史を、アート・ステューデント・リーグで絵画を学んだ。60年代からは美術評論家として活動し、絵画でも彫刻でもない新たな芸術の枠組みとして「スペシフィック・オブジェクツ」という当時の動向を論文として発表。同論は当時のアメリカ美術界に大きな影響を与えることとなった。

会場風景より、《無題》(1990)、静岡県立美術館蔵
会場風景

展覧会タイトルにあるマーファとは、作家が73年から移り住んだ、メキシコにほど近いテキサス州の町である。ジャッドは、同地に残された既存の構造体を再利用し、町全体を作品展示のための空間としてリノベーションした。複数個の箱(ユニット)を垂直に設置した「スタック」シリーズに代表されるような、幾何学的かつ還元主義的な作品で知られるジャッドだが、マーファでの建築計画や家具のデザインなど、その制作活動は多岐にわたる。

会場風景より、《Front Shelf Chair 84-6》(1978)

ジャッドの息子であり、ジャッド財団の共同代表を務めるフレイヴィン・ジャッド「父は自身の作品をミニマリズムと称されることにたびたび抵抗感を示していました。ドナルド・ジャッドというアーティストの制作の根底には、ヨーロッパを中心に形成されてきたアートをいちからつくり直すという、DIY的な精神があると思います」と語る。アメリカ中西部の荒涼とした農地で生まれ育った作家にとって、何もない場所に風景をいちから構築したマーファでの実践は、ひときわ特別な意味を持つものであった。

フレイヴィン・ジャッド