公開日:2026年3月3日

飯川雄大の個展「大事なことは何かを見つけたとき」(水戸芸術館 現代美術ギャラリー)レポート。「0人もしくは1人以上」の観客に向けて

作品をほかの個展会場へ運び出すプロジェクトも。会期は2月28日〜5月6日

デコレータークラブ─ピンクの猫の小林さん 2026

過去最大規模の個展で、これまでの実践を包括的に紹介

飯川雄大の個展「大事なことは何かを見つけたとき」が、水戸芸術館 現代美術ギャラリーで開幕した。会期は2月28日から5月6日まで。

飯川雄大は、時間の相対性や知覚のゆらぎに着目し、身近な風景の注意深い観察を通して、人々の認識の不確かさや、社会で見過ごされがちな存在に光を当てる作品を制作してきたアーティスト。2007年から続く「デコレータークラブ」は、周囲の環境に擬態する蟹の名前に由来し、記録という行為、そしてそこからこぼれ落ちるものへの関心から生まれたシリーズだ。鑑賞者のアクションによって作品が立ち現れたり、鑑賞者から見えない場所で別の出来事が進行したりするなど、介入を契機に新たな風景や予期せぬ出来事が生まれる実践で知られる。

会場風景

作家にとって過去最大規模の個展となる本展では、「デコレータークラブ」の作品を中心に、ドローイングや写真、映像なども交えながら、これまでの多岐にわたる活動を紹介。情報の曖昧さや感覚の不完全さを新たな可能性ととらえ、美術館の建築や空間的特徴を生かした新作も発表される。担当学芸員は同館の畑井恵。

「大事なことは何かを見つけたとき」のタイトルが示す通り、本展では鑑賞者が何かと出会い、発見することそのものを鑑賞体験の核としている。そのため本稿では、鑑賞者のアクションにより何が起きるのかの“ネタバレ”をなるべく避けながら、その見どころを紹介したい。